Climate Reality 東京トレーニング2日目 「知識を行動に変える」(1)

専門家チームによるパネルディスカッション2日目

 2日目のテーマは、「知識を行動に変える」。企業のリーダーや一般の人々が変化を起こそうと行なっている取り組みについて聞き、気候変動に対する行動を起こす方法を見いだそう、というテーマでした。

基調講演 小池百合子東京都知事

 まず、小池百合子東京都知事の基調講演から始まりました。小池都知事は、かつて、環境大臣として、国対国の環境対策に取り組んできました。都知事である現在は、都市と都市の連携に力を入れているということです。今年の5月、Urban 20(U20)という国際会議が東京都で開催され、都市に関係する廃棄物対策、大気対策、水の確保などが話し合われたそうです。

Tokyo: 3つのシティ

 「21世紀は、大都市に人々が集まってくる時代であるので、それだけに環境問題が深刻になる。」と語っていました。東京都は、3つのシティ“Safe City, Diverse City, Smart City”をつくりあげることを目標としており、この3つのシティを担うのは「人」なので、人に力を入れた都民ファーストの理念を大切にしているとのことです。

東京都のエネルギー消費量
東京都エネルギー消費量と都内総生産

 東京都のエネルギー消費量は、2000年をピークに、減少傾向にあり、都内総生産は増加傾向にあるとのことです。脱炭素社会に向け、下記のような取り組みを紹介していました。

  • 都庁舎で使用する電力からCO2排出量をゼロとする「都庁舎版RE100」の推進
  • 大規模事業所における対策としての総量削減義務と排出量取引制度(キャップ&トレード制度)
  • ZEV(Zero Emission Vehicle)の普及:電気自動車は蓄電機能もあり、災害時にも助かる
  • プラスチック削減:都が主催する会議ではペットボトル、ストローを使わない。食べられる食器を活用する。イベントはプラスチックフリーと保育という組み合わせで実施。職員はレジ袋を使わない。
  • Tokyo Green Bond:今年で3年目。東京の眠っているお金をグリーンに循環させ、サステイナブルファイナンスのいっそうの普及を目指す。
心・技・体

 日本は武道の国。「心、技、体」の侍スピリットになぞらえて、心:クールビズ、技:省エネ(LED化など)、体:システム(制度、税金など)3つがそろうと相乗効果がある、という話も印象的でした。

 東京オリンピックについては、「1964年大会は、戦後復興と成長がテーマとされていましたが、2020年大会は、少子高齢化の日本において、持続可能と成熟がテーマであります」と言及していました。

 このように、東京都の具体的な取り組みの紹介があり、イベント開催や組織・ビジネスパーソンとしての心構えなど参考になりました。また、脱炭素と投資を結びつけた話がここでもあり、やはり、気候変動対策で金融の果たしていく役割は大きいと感じました。

変化をもたらす企業

 モデレーターの末吉竹二郎さん(気候変動イニシアティブ代表、国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP-FI)アジア太平洋地区特別顧問)は、「Climate Crisisがないことへの危機感」と、「日本が世界の潮流に立ち遅れているという危機感のなさの危機感2つの危機感」を感じている、とセッションをはじめました。世界は、TalkからWalk、WalkからAction、そしてPositive Impactという潮流にあるとのことです。

 温暖化対策自体が国際競争となってきている昨今、その鍵を握るのは、ビジネスです。ビジネスに、ゼロエミッションなどという根本的解決を求められ、国は法律や制度を整えることが求められ、金融がそのドラスティックに変わっていくビジネスをどう支えていくか問われています。幅広い企業のリーダーの皆さんによって、気候変動に対する取り組みや方法が話し合われました。

 環境ウェアを1973年からつくってきたパタゴニアの日本支社長である辻井隆行氏は、洋服作りは世界のCO2のうち8%を占めていると言われ、また、水や土壌を使っているので、サプライチェーンのインパクトを最小限におさえようとしている、と述べていました。興味深かったのは、環境リスクからビジネスリスクになっているという話でした。人材確保のリスクや、顧客へのリスクです。洋服作りには、大勢の人が関わっているので、働く環境を整える必要があります。また、Z世代と話す機会が多く、彼らの企業を見る目は厳しいので、きちんとESGをやっていく必要があるということです。気候変動を考える上で、マイナスを抑えるだけではだめで、その先に取り組まなければならないということが、わかりました。

 水野弘道氏(年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)理事兼CIO(最高投資責任者))は、年金を運用して行く中で、長期的に社会に何が起きるかという視点が大事であると述べました。温暖化問題を抱える将来の20、30、50、100、200年という超長期の視点です。「投資家は、今のボラティリティの変化を分析しているが、10年後の金利を当てることは、不可能。でも、科学に基づいた10年後の気候変動を予測することはできる。」GPIFが出している気候変動に基づいたレポート 「GPIFポートフォリオの気候変動リスク分析」 の紹介などもありました。運用会社と投資先企業の間における、持続的な成長に資するESGも考慮に入れた建設的な対話(エンゲージメント)を促進することで、長期的な企業価値向上が経済全体の成長に繋がり、最終的に長期的なリターン向上というWin-Winな環境構築になるという話は説得力のあるものでした。

 鶴田健志氏(ソニー株式会社 品質・環境部 ゼネラルマネジャー)は、国際マーケットのプレッシャーの中、日本のスタンダードではなく、世界のスタンダードで取組んでいると話していました。また、現状について、ようやくアライメントができてきたと言っていました。これまでは、環境の人同士の話し合いであったのが、今はトップと金融間とのフェーズになっているということです。

 吉高まり氏(三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社 環境戦略アドバイザリー部チーフ環境・社会(ES)ストラテジスト)は、過去に会社を辞めて環境ビジネスを学んだ経歴があるとのことです。その頃は、環境ビジネスというとマイノリティーでしたが、もはや180度変わった時代がきたと語っていました。銀行もビジネスをする上でパリ協定やSDGsに基づいた上で投資をしていく世の中です。「個人も、お金はただ消費のために使うだけでなく、意志をもって使うことができる。」その様な印象的な言葉を聞き、改めて、一人一人が意志をもって選択し、行動することの重要性を認識しました。

参考