Climate Reality 専門家チームによるパネルディスカッション1日目

 10/2、3の2日間にわたるClimate Reality東京トレーニングのスケジュールはこちらです。

 1日目のテーマは「知識を身につける」。アル・ゴア元米国副大統領によるレクチャーに加え、専門家による重要でタイムリーなトピックについてパネルディスカッションが行われました。このパネルディスカッションの各テーマについてまとめました。

グローバルな協力 —パリ協定、持続可能な開発目標、グローバル・カーボン・バジェット

 2015年のパリ協定で、世界の全ての国が、2050年までに温室効果ガスの排出量をゼロにするために協調することに合意しました。炭素予算には限りがある中、日本、世界に何が求められていくのか、パネルディスカッションが行われました。

 蟹江憲史教授(慶應大学大学院政策・メディア研究科)は、「グローバルな気候変動の問題を具体的にどうしていったらいいのか考える際に、SDGsはとても参考になる。」と述べていました。SDGsは、17の目標、169のターゲットで、2030年の姿を現していますし、ほとんど気候変動の話が含まれています。パリ協定もSDGsもバラバラのことではないことが分かります。

 今年9月23日ニューヨークで開催された国連気候行動サミットに出席されていた石井菜穂子氏(地球環境ファシリティ 統括管理責任者(CEO)兼議長)は、エネルギー以外でも色々なシステムを立ち上げていくことの重要性について述べていました。「国連気候行動サミットのテイクアウェイとして、サイエンスはクリアになった、突破した、という段階にきたものの、ソリューションのところにまだ課題がある。」と現状について言っていました。一番大きな問題は、フードシステムで、例えば、牛を育てるためには、膨大な大豆、水、土地が必要であるように、フードロス対策が求められている中、作る、食べるという流れを整える必要があるということです。それを聞いて、経済や生活が循環するように変わっていかなければならないのだと感じました。

 国連気候行動サミットのグレタさんの演説について、色々と議論がなされていますが、高村ゆかり教授(東京大学未来ビジョン研究センター)は、「本質的に受け止めなければならないのは、気候変動の影響、気温上昇とともに高まっているリスクをどのように考えるかということ。」と述べていました。私たちが生活をし、事業をしていることが、将来の世代の選択肢を狭めているということを直視し、変えていかなければなりません。

 企業そのものが再生可能エネルギーへの転換を求めていることも分かりました。ソニーやイオンなどが再生可能エネルギーを2030年までに50%にすると掲げているように、企業がブランド力向上や事業リスクの低減などを視野に入れて、ESG(Environment Social Governance)に積極的に取り組んできています。そういう意味でも、再生可能エネルギーへの機運が高まっているといえます。

石炭と気候の危機

 そのほか、IPCCが出しているレポートや、年間3%の省エネ改善を目指すイニシアチブ3%クラブのことも話題にあがっていたので、これからの行動のヒントを得るために、こちらの情報もフォローしていきたいと思います。

 地球温暖化の汚染物質の最大の発生源は、化石燃料を燃やすことです。日本は現在、エネルギーを化石燃料、特に石炭に依存しています。世界全体がクリーンエネルギーに移行しようとする中、なぜ日本では石炭火力が続いていて、現状を変えていくにはどうしたらよいか、専門家の皆さんによるパネルディスカッションが行われました。

 平田仁子氏(NPO法人気候ネットワーク 国際ディレクター、CAN-Japan代表)は、石炭火力が進んできた理由について、コストが安く、燃料が安定的に入手しやすいという特徴と、東日本大震災以降、原子力発電の代替として新規増設が行われているという現状について述べていました。

 その中で、金融業界の見方も動いてきていることが分かりました。三井住友信託銀行は、石炭火力発電プロジェクトの新規案件に原則ファイナンスしないという方針を示しました(2018年7月)。金井司氏(三井住友信託銀行 経営企画部フェロー役員 チーフ・サステナビリティ・オフィサー)は、気候リスクを考えないと金融リスク・ロスになるという危機感について述べていました。金融が、企業やビジネスに対して、社会にサステイナブルでポジティブなインパクトがあるかという視点で見はじめているということが分かりました。

 「日本は世界より5年遅れている。」そう指摘していたのは、夫馬賢治氏(株式会社ニューラル 代表取締役CEO)でした。世界は、2020年までに自社だけでなくサプライチェーンとしてもCO2ゼロについて話題にしているのにもかかわらず、日本は未だ石炭火力を支持しているからです。

 どうやって電力の安定供給をやっていくのか。原発も石炭も使ってきた日本に、転換が迫られています。

クリーンエネルギーの未来を実現する:機会とチャレンジ

 再生可能エネルギーは日本経済を大きく変える可能性がありますが、再生可能エネルギーへの急速な移行を通して、何を達成するかについて、1日目を締めくくるパネルディスカッションで話し合われました。

 企業の自然エネルギー100%を推進する国際ビジネスイニシアティブであるRE100に加盟している日本企業は、25社(2019年10月2日時点)、マーケット規模でいうと2000億円と言われています。イオンは、RE100およびJCLP(Japan Climate Leaders’ Partnership)に加盟している会社のひとつです。三宅香氏(イオン株式会社 執行役 環境・社会貢献・PR・IR担当)は、「買う人がいるのかわからないものを作るわけにはいかない、必要な人がいるという声を顕在化させ、もはや会社としての方向は定まっているので、それに向かってしっかり進んでいきたい。」と話していました。

 年々、再生可能エネルギーのコストは下がってきていますが、既存電力と同じ価格になれば広がるか?というとそれだけでは甘いようです。何故なら、再生エネルギーのための設備をそろえる必要があるからです。「もっと安くなってようやく広まるであろう。」と指摘しているのは、ロバート・アラン・フェルドマン氏(Ph.D モルガン・スタンレーMUFG証券株式会社)でした。しかしながら、再生可能エネルギーが広まれば、メリットも多々あります。例えば、8兆円という原油の輸入コストが抑えられます。また、大規模な発電施設が必要なくなるので、大都会が小さくなって地方が大きくなるという効果もあるということでした。

 磯野謙氏(自然電力株式会社 代表取締役)の、「エネルギーは最終ゴールではなく、手段。幸せに生きるためにはどうしたらいいかということを考えて、プロジェクトを進めている。」という言葉も印象的でした。

 その他、再生可能エネルギーは、エネルギーをつくるコストについては世界的に化石燃料を燃やすよりも安くできるところまできているものの、買う人に届くまでの間に高くなっているという実態や、日本における建設コストが高いこと、ルール作りをやっている審議会の種類が多すぎたり、省庁またいだ審議会に共通して出席している人が少ない、などという課題もあがりました。

 日本と世界の現状を知ることのできた1日でした。また、参加することに満足するのではなく、どう変わるのか求められていることを強く実感しました。

参考